スタンド・バイ・ミー・エンジェル
三話 ワーカーズ・ホスピタル
島田髷に髪を結い、詰袖を着た芸妓が三人、三味線を片手に、部屋へあらわれた。
「先生方、お難しい話は、それくらいでいいでしょう」
芸妓たちは、畳に両膝をつき、頭を下げた。一人が、白粉をたたいた顔をあげながら、艶やかな流し目を送ってみせる。
「おお、もうそんな時間か」
トドのように丸い体型の男が、腕時計を見て、大仰な声をあげてみせる。
大手運送会社の社長であり、今宵の地元の有力支援者の一人である。
今宵の国会活動を応援するためとして、今日、料亭での一席を設けたのだ。
今宵は、セーラー服姿で部屋の上座に座っていた。
席には、トド社長のほかに、支援者が五人。今宵と同期当選の若手党員が三人。末席には秘書の田沢が控えるという、計十人の面子だった。
若手党員といっても、今宵の他はみな四十歳を超えている。党の知名度で当選した比例区の面々で、今宵のように祖父から引き継いだ強力な地盤はない。
選挙資金を援助してくれる有力者と顔つなぎしようと、今宵に頼み込んで、この場に同席したのだ。
全国に運輸網を持つ社長も、悪く言えば政治家の手駒を増やすことに否やはなく、喜んで応じたのだった。
芸妓とともに、日本酒のお銚子とビールが運び込まれてくる。
「それでは、私はこの辺で失礼します」
今宵は、濃紺のセーラー服のリボンを揺らせて、腰を浮かせた。
「先生、まだいいじゃあないですか」
この場を仕切る運輸会社のトド社長が、今宵を引き止める。
「ありがとうございます。ですが、この後は皆さまでお楽しみください。私は失礼させていただきます」
丁寧ながらも、キッパリと断る。
「そうですか、それは残念です」
トド社長は、深追いしてこなかった。
「おい、茶屋先生のお帰りや。お見送りして」
料亭の仲居が、今宵を促して、案内してくれた。
セーラー服の裾を軽く翻しながら、料亭を通路を歩く。
トド社長は一度引き止めてはくれたが、それは形だけのものだ。
席の上座に未成年の今宵がいる以上、酒類は出せない。
料理が運ばれ始めて二時間近く、みな雑談しながらも、お茶だけで料理を食べていたのだ。
酒を知らない今宵にとってはどうということもないが、他の後援者たちにとっては、盛り上がらないこと甚だしい。
今宵が席を立てば、芸妓を呼び、酒をいれていくらでも騒げる。他の党員たちも、今夜はトド社長に付き合って、飲み明かすのだろう。
支援者の中でも、田舎の有力者ともなれば、おもしろ半分に今宵に酒をすすめてくる人間も少なくない。
最初は軽く受け流すことにしているが、あまりにしつこいと、場の空気を壊してでも、『社長、私に落選させるつもりですか!』とピシャリと言うことにしている。
そうした点、トド社長は、まだしもマナー、エチケットをわきまえているほうだ。
仲居に見送られて料亭の玄関を出ようとした時、後ろから田沢が追いすがってきた。
「先生、これからどうされます。議員会館に行かれますか、それともマンションに?」
予定は何もなかった。今日、こうして応援のための席を設けてもらったのだが、実は日中、野党との交渉が不発に終わり、国会開会は一ヶ月延期が決まったのだ。
スケジュールはすべて白紙となった。決まっているのは明日、白紙の予定表を埋めるべく、田沢をはじめとした秘書達と、議員会館で打ち合わせをする、ということだけだった。
「マンションに戻ります」
今宵はそう答えた。
「わかりました。私はこのまま社長にお付き合い致します。ご報告は明日の会議でよろしいでしょうか」
「お願いします、田沢さん」
田沢は中へ戻っていった。
料亭の表には、今宵の議員公用車が回されていた。
運転手が後部座席のドアをあける。
座席に乗り込もうとして、今宵は足を止めた。
映像を巻き戻すように、車の外にでる。
「先生?」
白い手袋をした初老の運転手が、心配げな声をあげた。
「ハイヤーで戻ります。運転手さんは社長と田沢の用に備えて、まだ待機しておいてもらえますか」
「はい」
運転手は素直に頷いた。
今宵は仲居に頼み、料亭の裏手に待機していた黒塗りのハイヤーを回してもらい、後部座席に納まった。
運転手に、都心のマンション名を告げる。
ハイヤーは静かに滑り出した。
丸の内から麻布のマンションへ向かうハイヤーの後部座席から、今宵はネオン煌めくビル郡を眺めていた。
料亭に議員公用車を置いてきたのは、後援者である運輸会社の社長のためだった。
以前、議員公用車に社長と同乗した時、社長は子どものように目を輝かせてハシャいでいた。「わしもこんな車に乗るほどになったか」とまで言っていた。
今宵にとっては公用車など単なる足であったが、市井の人間にとっては、滅多に乗る機会などない、珍しいものなのだろう。
やや公私混同ではあるが、公用車を置いてきたのはサービスというわけだった。
今宵は夜景から視線を外し、シートに深々と身を沈めた。
一ヶ月、国会開会が延期となった。
さて、明日からはどうしたものだろう。すでに田沢たち秘書に腹案はあるのかもしれない。
いったん地元へ戻る、という選択肢もあるだろう。
学校は、地元と東京の高校、二つに特別な手続きをし、どちらにでも出席できる。
国会議員としての活動は、課外授業として単位に組み込まれるようなっている。テストでよほどヒドイ点を取らない限り、出席不足でも落第することはない。
東京に残っても、地元に帰っても問題はない。
今宵のIDカードが、静かにクラシック音楽を流し始めた。通話着信の合図である。
スカートのポケットに入れていたパスケースから、紫色のカードを取り出す。
プラスチックカードの表面がディスプレイとなり、情報を浮かびあがらせる。
『ワーカーズ・ホスピタル』
労働者病院?
聞いたことのない発信先だった。
病院と言えば、昨夜のホームレス兄妹が思い浮かぶ。
兄妹がいた病院は、そんな名前ではなかった。
住所や江東区木場となっている。病院の院長名や事業内容も表示される。やはり聞いたことがない。
今宵のカードには、番号だけではアクセスできない。今宵がカードに登録しているか、あるいは今宵が渡した名刺ICチップの照合が必要だ。
今宵は首を傾げつつ、カードに指を触れて、通信を受けた。
膝の上に置いたカードから、聞いたことのない男のダミ声が聞こえてきた。
六十年前に建てられた小学校を改築した病院。
それが新木場にあるワーカーズ・ホスピタルだった。
外壁のペンキは、元は白かったのかもしれないが、今は灰色となり、夜の闇の溶け込んでいる。
今宵を乗せたハイヤーが、ワーカーズ・ホスピタルの玄関に寄せられる。
運転手を待たせ、きしむ扉を開けて、中に入る。
きつい消毒液の匂いが鼻腔を突いた。
建物の中は、真夜中の無人駅のように薄暗い。
廊下の天井には、蛍光灯がびっしり並べられている。しかし、十本のうち一本ほどしか点灯していない。
建物に人の気配はするものの、廊下には人っこ一人いない。
両側に並ぶ教室が、病室になっているようだ。
腕時計を見ると、時間は午後九時。
もう消灯の時間なのだろう。
今宵は古ぼけた案内板を頼りに、一階の診療室を目指した。
建物の東角に、診療室はあった。
扉は開いている、というか、扉そのものが付いていない。
中からは、廊下よりも若干明るい光が洩れている。
診療室の中に入る。
ところどころ錆の浮いたスチール机の前に腰かけているのは、天然パーマの白髪が頭のうえで爆発している、六十がらみの初老の男だった。
黄色や赤っぽいシミのついた汚らしい白衣を、前を開けてだらしなく着込んでいる。
先ほどの運輸会社の社長を思わせる太った体型で、椅子に座っているとお腹がつっかえて苦しそうだった。
白衣の下は、真冬だと言うのにランニングシャツに、よれよれのジャージ、裸足にサンダル履き。
汚れた白衣の男が、今宵に気が付いた。
今宵は軽く頭を下げる。
「いや、本当にアンタが来なさるとはの」
太った初老の男は、無遠慮に今宵を足先から頭のてっぺんまで見回した。
「ええと、まあテレビで顔は知っちょるから間違いないのは分かっとるが、一応念のために。茶屋今宵先生、本人ですかの?」
「はい」
今宵は頷いた。
白衣の男に促され、椅子に腰かける。机同様にガタがきているスチールチェアは、悲鳴のようにきしんだ音を立てた。
白衣の男、ワーカーズ・ホスピタルの担当医は、机の上に山積みされた書類から、一枚の紙切れを引っ張りだした。
「先ほど、電話で簡単に説明したとおりなんですがの。男が、えっと、どこだったかの?」
医者は白衣の胸ポケットから老眼鏡を取り出して、書類を顔に近づけたり、遠ざけたりした。
「どうも、最近、目がますます悪うなりましての。まったく、パチンコの出目が揃っても、音楽が聞こえんと気が付きもせん有り様で。えっと、六本木の高架線の下ですの。男が倒れとったのは」
膝の上に置かれたいた今宵の両手が、スカートを握りしめる。
「男は、身元を証明するものを持たず、名前も不明。年齢は推定十八歳前後。弟が、いや、妹さんですの。一緒におったそうですが、なんやらよくわからん名前を呼ぶだけで、状況の説明はできず、と」
「あの、いまの容態は?」
「ああ、命に別状はありゃしません。今は薬と点滴でよう眠っとります」
今宵は胸を撫でおろした。
「まあ、なんにしろ、誰か連絡のつくモンに連絡するのが決まりですけんの。大人の身内がおりゃあ、それが一番なんじゃが。で、その男のコートの中身を出してみたら、なんやら場違いに豪華な名刺が一枚だけ入っとりましての」
医者は、老眼鏡越しにジロリと今宵を見た。
「それがなんと、あの女子高生衆議院議員の茶屋今宵先生の名刺ときとる。ぶっちゃけ、あの男の風体からして、盗んだモンかとも思いましたがの。金や貴金属を盗むならいざ知らず、名刺を盗むなんて、あまり聞かんですけんの。先生のファンで、名刺は作りもんかと思い、一応読み込ませてコールさせたら、なんと本物の茶屋先生に繋がってビックリじゃ」
「はい、その名刺はたしかに私が彼に、風浪寓人さんに渡したものです」
「ほう、名前は、えっと、かざなみぐ……、すんません、ちと漢字で書いてもらえますかいの」
紙とペンを渡され、今宵は机の上でスラスラとペンを走らせた。
「どうもですの。これであの患者の名前はわかったと。ええと、先生と、あの患者のご関係は?」
今宵は答えに詰まった。医者は業務処理上、必要だから聞いているだけで、興味本位で尋ねたわけではないだろう。
ただの知り合いです、で済ませてもよかった。しかし、誤解されても困る。今宵は時間をかけて、一昨日、昨日の一連の流れを、ワーカーズ・ホスピタルの医者に語って聞かせた。
話し終えた後、医者は頷いた。
「なるほどですの。知り合っちゅーか、まあ、他人ですの」
医者の言うとおりだった。
「でも、先生ご自身が、こうしてここまで来られたっちゅーのは、やはり一概には他人と割り切れない、何かがあったっちゅーことですかいの」
こうして医者と話している間中、いや、病院へ向かうハイヤーの中でも、今宵がずっと自問自答していたことだった。
自分はなぜ、ここに来たのだろう?
通常なら、秘書の田沢に連絡するはずだ。
田沢がいま、運輸会社の社長の接待を行っていることを知っているから、邪魔しないように考えてしまったのだろうか。
いや、田沢でなくても、秘書はほかにもいる。
他の秘書に連絡して病院へ行かせ、後で報告させればよかったはずだ。そうするのがルールですらある。
だが、今宵は誰にも連絡せず、一人でここへ来てしまった。医者が「他人」だという人間のために。
なぜだろう?
答えが見つからぬまま、今宵が口に出したのは別のことだった。
「あの、倒れた原因はなんだったんでしょう。電話では食中毒の疑いがある、ということでしたが」
「ああ」
医者は頷いて、もう一度書類に目を落とした。
「あれから検査してわかりました。食中毒ちゅうか、アレルギーに近いもんですの。先生はフェイシンちゅうもんをご存知ですかの?」
フェイシン!?
今宵の心臓が激しく動悸した。
「最近売られるようになった人口甘味料のフェイシンですの。甘みが強いうえに痩せられるちゅうて、女どもが最近よう使っとると聞く。だけんど、こりゃ胃の粘膜を刺激して、食欲を抑えるんじゃ。食い過ぎると、胃に穴が空くかもしれんちゅうて、禁止しとる外国も多いんじゃがな」
「そ、そうなんですか」
今宵は小さな声を出した。フェイシンは、今宵が風浪に見舞いとして贈ったクッキーに入れた甘味料だった。
「とはいえ、普通に暮らしとる成人の男子なら、ここまで悪化することはないんじゃがの。よほど不健康な生活をして、体が弱っとったんじゃろうのう。カードも持っとらんし、先生の話を聞く限り、やはりホームレスのようじゃしの。ところで」
医者は上目遣いに今宵を睨んだ。
「この男の入院費用は、先生が出してくださるんかいの?」
入院費用? 今宵は戸惑った。
風浪寓人の食中毒の原因が、自分のクッキーにあることは間違いないようだ。
「救急の患者でしたからの。救急車の費用、すでに投与した抗生剤と、栄養のため打ったブドウ糖の注射代、とりあえず今日のベッド代。その辺は、先生が他人とはいえ、できれば今すぐ払うてもらうと助かるんですがの」
「おいくらになりますか?」
今宵は、バッグから財布を取り出した。
「おい、いくらになんな?」
医者が、部屋の奥に声をかけた。
奥の部屋から、中年の女事務員が仏頂面で現れた。ぶっきら棒に伝票を医者に渡す。
「しめて一万二千円になりますの」
現金はあまり持ち歩かないが、なんとか足りた。
お金を事務員に渡す。
「こっから先の費用も、先生に見てもらえるんですかいの?」
「どれくらいになりますか?」
「一週間から十日。手術の必要とかはないですけん、まあ、十万円くらいみといてもらえると間違いないですの」
「わかりました。治療に必要な費用は、私が負担します」
「そりゃ助かります。なんにしろ、こんな病院じゃて。今いる入院患者の半分は、治療費が払える見通しはゼロですし、満額払ってくれる患者なんぞ、十人に一人おりゃあいいほうですけんの」
今宵の保証に安心したのか、医者は上体とそらして、満足そうに息を吐いた。
「患者の顔は見ていかれますかいの。今は眠っとるんで、話すことはできゃしませんが」
今宵はしばし逡巡した後、見ていく旨を告げた。万が一、他人という可能性もある。念のため、確認はしておきたいと思ったのだ。
風浪の病室には、医者本人が案内してくれた。
二階の一室。
元は教室だった部屋には、二十近いベッドが、等間隔に並べられている。
廊下の窓から中を覗き込む。
鈍い橙色の裸電球が、室内をぼんやり灯している。
風浪のベッドはすぐわかった。ベッドの脇の椅子に、昨夜と同じ、着膨れしてまん丸に膨らんだヒミコが腰かけていたからだ。
患者はすでに全員寝ているようで、中に入るのはためらわれた。
「あの子はどうしなさんの、先生?」
医者が、顎でヒミコを指し示しながら聞いてきた。
「女の子のことですか。ここで預かっていただくわけには?」
「そりゃ無理ですの」
医者は即座に拒否した。
「ここは貧乏人の病院ですからの。そういうのを認めとったら、次から次へと家のない身内が寄ってきて、ここで寝泊りするようになるんですわ。ですから、本人以外の宿泊は、たとえ子どもの親でも認めとらんのです」
ヒミコに行くあてはあるまい。病院を追い出されれば、病院の軒先ででも野宿して、開院と同時に中へ入ることになるのだろう。
「なあ、先生。ここは最下層の病院じゃあ。いや、病院とは名ばかりのところでの。他所では廃棄処分になるような薬ならあるが、ちと難しい病気や手術はお手上げじゃ」
突然、医者が病院の事情を語りだした。
「死ぬとわかっとっても金のない患者は放り出さにゃならんし、あの女の子にしたって、行く当てはないとわかっとるが、十一時になれば、わしはあの子を玄関の外に追いやって、鍵を閉めるじゃろう」
医者は、病室に視線を彷徨わせながらつづけた。
「病気のまま追い出される患者は、わしを鬼じゃと言うて呪いながら放り出される。わしは酒と博打で、家庭も地位を失って、捨扶持でこの病院の医者をやらされとる。なあ、先生。患者に恨まれる、こんな病院に勤めたくて、若いモンのだれが医者を目指すかね。ええ、先生?」
政治でなんとかして欲しい、と言っているのだろう。しかし、今宵には答えようがなかった。
「しかし、こんな病院でも、来られる方はまだ幸せで、病院なんぞ言葉でしかしらん連中もゴマンとおる」
その時、廊下でのやり取りに気が付いたのか、ヒミコが立ち上がった。
早足でこちらへやって来る。
「先生、グウ兄、死んじゃうんですか」
病室から出てくるなり、ヒミコはそう言って医者に迫った。
「はっはっは、心配いらんて。兄ちゃんは、ちょっと具体が悪くなっただけじゃ。ゆっくり寝て、ご飯食べたらすぐ治る。心配はいらん」
医者は、思いのほか優しい声でそう言った。太った体をしゃがみこませると、ヒミコの頭を撫でる。
「でも……」
ヒミコはそこで、初めて今宵に気が付いた。
「あら、アンタ、なんで、ここにいんの?」
ヒミコが訝しい顔をしながら、驚きの声をあげる。
「なんで、なんて言っちゃいかん。このお姉ちゃんは、お兄ちゃんが心配でここに来てくれたんじゃ」
医者がたしなめる。だが、それで怯むようなヒミコではなかった。
「へえ、なんで? アンタの病院は退院したし、もう関係ないじゃん」
「あの、それはね。風浪寓人さんが食中毒で倒れたと、私の名刺を通して連絡があったから……」
「食中毒ですって!?」
静まり返った病院中に響き渡らんばかりに、ヒミコが甲高い声を上げた。
「食中毒! わたし、知ってるわ!」
知ってると言われて、今宵は喉から心臓が飛び出しそうになった。
「わたしは最初からアレが怪しいと思ってたのよ。やっぱりそうだったのね!」
怒鳴られる、と今宵は覚悟した。
今宵に掴みかかってくると思いきや、ヒミコは踵を返して駆け出した。
あっという間に廊下の向こうに消える。階段を駆け下りるリズムよい足音が響いてきた。
「ちょ、ちょっと……」
医者はポカンとしている。今宵は一寸遅れて、ヒミコを追って駆け出したのだった。